ハンドルのない車が走る街に、僕らは何を宿すのか。

パナソニック エナジー CEOインタビュー
——AI時代の社会インフラを支える挑戦。未来を拓く人のアナログ力

写真:代表取締役 社長執行役員 チーフ・エグゼクティブ・オフィサー(CEO) 只信一生

もう未来社会は始まっている

先日、米国で自動運転のロボタクシーに乗りました。スマホで配車を依頼し、ハンドルのない車が静かに目の前に止まる。目的地をタップすると車は走り出し、到着したら降りるだけ。支払いも自動完結です。一度体験したら、「もう以前の生活には戻れない」と感じるほどの快適さでした。映画で見たような未来社会の扉は、実はもう開いているのです。

この電気自動車(EV)をベースに開発されたロボタクシーを裏で動かしているのは、クラウドや人工知能(AI)、そして膨大な演算を24時間体制で支えるデータセンター(DC)です。そして、そのDCやモビリティを非常時にも支え続けているのが、私たちがつくる“止まらない電池”です。

物流倉庫で縦横無尽に走る自律走行ロボット、天候データを解析して作物を育てる農業AI、地域を巡回して高齢者の移動を支える小型モビリティ。世界中であらゆる社会インフラがデジタルと電気でつながろうとしています。

テクノロジーがどれほど進化しても、それをハードとして動かし、人々のくらしに安心を与え続ける「電池」がなければ何も動きません。つまり、その裏側には必ず「止まらない・安全な電池」が存在し、社会インフラの進化を常に支えているのです。

「標準化」と「適応力」で社会の激変をチャンスに変える

当社の主要顧客である電気自動車(EV)とDCは、一般的には「別領域」として語られます。しかし私はそう捉えてはいません。AIが社会の頭脳となり、EVやロボットがクラウドとつながり、人のくらしがデジタルと融合していく未来では、現在のEVやDCの浸透は、社会インフラを構築する“地続きのプロセス”です。自動運転車はクラウドと車載AI・センサーで動き、ロボットはAIの演算で動き、すでに都市インフラは電気でつながっているのです。つまり、EVとDCは、AI社会に向かう一つの潮流です。

パナソニック エナジーは、EVで培った材料・製造・生産技術をDCにも応用し、DCで磨いた高安全・高信頼のシステム技術をEVにも還元する。そうして両輪を互いに進化させるビジネスモデルをつくってきました。EVの進化を高いレベルで支え続けてきた実績が評価され、DCの急速な進展にも大きく貢献することができています。円筒形電池の材料・製造・生産技術のノウハウ、そして最も重要な経営資産である多様な人財が変化への高い適応力を生み出しています。

私たちが変化に強い最大の理由は、モノづくりの柔軟性と独自の資産戦略にあります。それを分かりやすく和菓子の「もなか」に例えてみましょう。

私たちが作っている円筒形電池の外側のケースサイズ(1865や2170など)は「もなかの皮」です。このケースサイズや生産設備を標準化し、中に入れる「あんこ」となる材料や技術を、粒あんから白あんに変えるように、市場の需要に合わせ柔軟に最適化していくのです。

イメージしやすいように例えてみましたが、既存の設備や人的資産を無駄にすることなく、蓄積してきたノウハウをフル活用して迅速に別の成長市場へ適応する。この柔軟なビジネスモデルがあるからこそ、私たちは激変する時代を恐れることなく、常にチャンスとして捉えることができるのです。

「森の会議」で磨かれる人間のアナログ力

このように世界がデジタルで覆われるほど、私は「人間が持つアナログな力」こそが企業の最大の財産になると確信しています。複雑なデータ解析や効率化はAIが担う時代が訪れたのです。だからこそ人間は、コミュニケーションを深め、心で触れ合い、「何が人間の幸せなのか」を考えることに時間を使うべきです。

電池を設計・製造するにはサイエンス(数字や論理)が必要です。しかし、それを社会に実装し、人々に安心を届けるためには、人の心に明かりをともす「アートの感性」(想いや使命感)が欠かせません。

当社には創業以来掲げてきたミッション「幸せの追求と持続可能な環境が矛盾なく調和した社会の実現」、ビジョン「未来を変えるエナジーになる」、そしてウィル「人類として、やるしかない」があります。それを社員一人ひとりが実践していくために「森の会議」というユニークな取り組みをしています。社員が自然豊かな森や原生林の中に集まり、野生動物の命と向き合うフィールドワークや、スズメバチの巣から蜂蜜を採取する体験や、土や木の生態系を学ぶサイエンス講義などを行います。座学で表面的な知識を学ぶのではなく、五感を通じて命の恵みや地球環境を「皮膚で感じ取る」。その中で、「なぜ私たちはこの会社に集まり、何のために働くのか」を一人ひとりが本音で語り合い、自らの使命感を研ぎ澄ましていきます。

パナソニック エナジーのMission「幸せの追記と持続可能な環境が矛盾なく調和した社会の実現」、Vision「未来を変えるエナジーになる」、Will「人類としてやるしかない」

社内を見渡せば、まだ自らも気付いていない輝きを秘めた「宝石のような人財」がたくさん埋もれています。その一人ひとりが持つ強みを発掘し、混ぜ合わせ、挑戦できる場を提供することこそが、経営者である私の最大の責務です。

写真:代表取締役 社長執行役員 チーフ・エグゼクティブ・オフィサー(CEO) 只信一生

全員が主人公の物語を絵本で紡いでいく

私は毎年、私たちの現在地と目指す姿を、自ら構想した一枚の絵として社員に共有しています。

今年の絵のタイトルは「挑み続ける仲間」。猛烈な荒波を越えた先で、足元を固めて新しい拠点を築く者もいれば、新たな翼を得て次の崖へ飛び立とうとする鳥もいます。崖の下からは、苦しい試練を乗り越えて登り切ろうとする仲間をみんなで支え合っている。私が描くストーリーは、単なる事業計画ではありません。パナソニック エナジーという会社の歩みを記す「歴史の絵本」です。そして、その中に登場する一人ひとりの従業員こそが、代役のいない主人公なのです。

世界で巻き起こる変化はこれからますます激しさを増すでしょう。しかし私は、従業員の活躍を見て、ミッションの実現に確信を持っています。全員が主人公として未来を切り拓いていく——その姿こそが、パナソニック エナジーの最大の競争力です。

Missionにつづく道「超える覚悟」、予測不能な試練にも心折れることなく、湖を渡るための船を手作りして荒波を超えようとしている、我々の姿を描いたイラスト

2026-10-09