パナソニック エナジーの挑戦
~電化とAI時代を支える電池・電源技術とは?~
リチウムイオン電池(LIB)の役割が、電気自動車(EV)をはじめ電力のバックアップ電源など社会インフラの用途へと広がっています。再生可能エネルギーの導入拡大に加え、生成AIの普及によってデータセンターの電力需要が増え、ESS(Energy Storage System)やバックアップ電源システムの重要性が高まっているためです。
こうした変化に伴い、電池に求められる性能が多様化してきています。2026年9月9日に幕張メッセで開催された「BATTERY JAPAN~第21回[国際]二次電池展~」では、パナソニック エナジー 副社長執行役員の渡邊庄一郎CTOが講演し、この変化への向き合い方を語りました。
本記事では、EVとAIデータセンターで異なる電池の要求性能と、セル技術を軸とした当社の取り組みを紹介します。
リチウムイオン電池の活用領域は、EVに加えて社会インフラへ広がる
「電池事業の見える景色が変わってきた」。講演の冒頭、渡邊CTOは、LIB市場を取り巻く変化をこう表現しました。
世界のLIB需要は、今後も拡大が見込まれています。その中心を担ってきたのが、車載用電池です。モビリティ市場の成長速度は地域によって異なり、日本や北米では足元で伸びが緩やかな一方、中国や欧州ではBEV(Battery Electric Vehicle)の普及が引き続き進むと予測されています。
同時に、急速に存在感を高めているのが、発電した電力を蓄電池に蓄えて必要なときに供給するESSです。講演で示された世界のLIB需要予測では、ESS用の割合は2025年の30%から2035年には42%へ高まる見通しです。
2026年9月9日開催「BATTERY JAPAN~第21回[国際]二次電池展~」における渡邊庄一郎CTO講演資料より。以降の図表も同様。
ESSの需要が伸びる要因の一つが、AIの急激な進化です。AIデータセンターの拡大に伴い、この安定稼働を支えるバックアップ電源システムの重要性が高まっています。このようにLIBの役割は、モビリティに加えデジタル社会や電力インフラへと広がっています。
なぜ今、ESSや電源システムが重要なのか
ESSやデータセンター向けのバックアップ電源システムの重要性が高まる背景には、脱炭素とAIの進展という2つの社会変化があります。
一つは、太陽光や風力など、再生可能エネルギーの導入拡大です。再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって発電量が変動します。そこで重要になるのがESSです。電力の需給バランスを調整することで、再生可能エネルギーを安定して利用できるようになります。
もう一つが、生成AIの利用拡大です。AIデータセンターでは、電力消費量が増えるだけでなく、演算処理能力の進化に伴って電力負荷も大きく変動します。安定した稼働を維持するには、停電や急激な負荷変動に対応するバックアップ電源システムが必要になります。
課題は電力だけではありません。データセンターの設置や運用には、冷却などに使う水や土地も必要です。世界中でAIサービスが利用される一方、その運用に伴う電力・水・土地への負荷が特定の地域に集中します。こうした地域負荷は、AIデータセンターの拡大に伴う環境課題の一つです。
AIの利便性と地球環境を両立するためには、再生可能エネルギーを増やすだけでなく、電力を蓄え、必要な場所とタイミングで安定して供給する仕組みが欠かせません。その仕組みを支えるのが、ESSとバックアップ電源システムです。
EV用とAIデータセンター用電池で、求められる性能はどう違うのか
電池に求められる性能は、用途によって異なります。車載用電池(セル)では、1回の充電でより長い距離を走行できる高容量化が重要です。一方、データセンター用BBU(Battery Backup Unit)向けセルでは、停電などの緊急時にサーバーへの電力供給を維持するため、短時間に大きな電力を供給する出力性能が重視されます。
講演では、車載用セルが走行中に約5時間かけて放電するのに対し、BBU向けセルは緊急時の約3分間で大きな電力を供給することが示されました。いずれも高い安全性と信頼性が必要ですが、使用時間や求められる出力が異なるため、セルの設計も変わります。
BBU向けセルのように短時間に大きな電力を取り出すには、セル内部の電気を流れやすくし、電流を広い電極面積に分散させることが重要です。パナソニック エナジーが手掛ける円筒形電池では、電極を薄く長くすることで単位面積当たりに流れる電流(電流密度)も抑える等の工夫により、高出力に適した設計を採用しています。
高容量、高出力、バランス型へ。広がる用途に応える電池技術
パナソニック エナジーは、1994年にリチウムイオン電池事業を開始して以来、高容量化とともに、安全性や信頼性の向上を追求してきました。データセンター向け蓄電システム事業でも、10年以上にわたり開発・納入実績を積み重ねています。
こうして培ってきた電池技術と事業経験の新たな活躍領域として期待されるのが、AIが現実空間で機器やロボットを動かすフィジカルAI分野です。
例えばヒューマノイドには、長時間稼働を支える容量、複雑な動作に必要な出力、人の近くで使用するための安全性が、いずれも求められます。このように用途が広がると、電池に求められる性能の組み合わせも多様になります。渡邊CTOは、容量と出力のどちらか一方に特化するのではなく、用途に応じて複数の性能を組み合わせる領域を「バランス型」と表現しました。
こうした用途の広がりに応えるため、開発の体制も強化しています。セルの材料開発から設計・試作までを一貫して手掛ける研究開発拠点「エナジーイノベーションスクエア」が大阪・門真で本格稼働を開始しました。生産技術の開発を担う住之江開発拠点とあわせ、約800名規模の体制で電池セルの開発を加速します。また全固体電池を含む次世代電池についても、将来の用途と要求性能を見据えた技術開発に取り組んでいます。
モビリティの電動化を通じて脱炭素に貢献する車載事業と、AIデータセンターをはじめとする社会インフラの安定稼働を支える産業・民生事業。パナソニック エナジーは、この2つの事業領域で培った技術を生かし、今後も社会の変化に応じた新たな価値を生み出していきます。
2026-10-09