「削減貢献量」って何?
社会の温室効果ガス排出削減への企業の貢献を示す“新たな指標”
2026年1月、国際電気標準会議(IEC)で規格化された「削減貢献量」。脱炭素に向けた対応力が企業の競争力を左右する時代になり、事業活動における温室効果ガス(GHG)排出量をどれだけ減らしたかが評価されています。しかし、脱炭素に貢献する優れた製品・サービスがどれだけ社会や顧客のGHG排出を削減しても、そのことを適切に測定して評価する指標はありませんでした。また、世界で「自社の削減だけでは社会全体の脱炭素化は達成できない」という認識も広がりつつあります。そこで注目されているのが、「削減貢献量」という新しい指標です。
「削減貢献量」とは何か
社会全体のGHG排出削減にどれだけ貢献したかを示す指標
「削減貢献量」とは、「普及している製品・サービスと比べ、より低炭素な製品・サービスが提供されることで、社会全体のGHG排出量がどれだけ削減されたか」を定量化する指標です。
GHG排出量を算定・報告する世界標準の“GHGプロトコル”で分類されるScope1〜3は「自社(企業)サプライチェーン全体でのGHG排出量の大きさ」を示す”守りの指標“であるのに対し、削減貢献量は「社会全体のGHG排出量の削減に製品・サービスがどれだけ貢献した(する)か」を示す“攻めの指標”です。企業価値の向上に直結し、温暖化による社会の将来の損失を回避できることから、投資家や金融機関も関心を高めています。
なぜ今、「削減貢献量」が必要なのか
企業活動を脱炭素社会の実現に直結させるため
これまでは、より低炭素な製品・サービスの普及が社会全体のGHG排出削減に大きく寄与するようになってもそれを評価する指標は存在せず、事業活動で発生したGHG排出量の削減が企業の環境への取組評価の中心でした。「削減貢献量」は脱炭素化に貢献する製品・サービスが普及するほど増加するため、脱炭素と事業成長の両立を評価できます。つまり、脱炭素化に貢献する製品・サービスが普及することにより企業の「Scope1~3」の排出量が増えるという“ジレンマ”に対し、製品・サービスを通じた社会全体の排出削減への貢献を示せる点が「削減貢献量」の大きな特徴です。
GHG算定ルールのほとんどが海外機関主導でつくられる中、「削減貢献量」はパナソニックホールディングスなど日本企業も国際的な議論に参画し、国際標準化が進められてきました。金融機関からは企業評価や投融資の参考指標としての活用が検討されています。IECの新規格では新製品の比較対象を、もっとも市場に浸透している製品や状態での排出量、とすることで、数字を大きく見せる行為(グリーン・ウォッシュ)を防ぎ、また算定方法を統一することで透明性を高めています。
「社会全体の脱炭素に貢献する企業が評価される仕組み」として「削減貢献量」が位置付けられることで、評価された企業に資金が集まり、より低炭素な製品・サービスの普及が加速し「一刻も早い脱炭素社会の実現と経済成長につながる」ことが期待されているのです。
「削減貢献量」はどう算定するのか
低炭素な製品・サービスに置き換えた場合の排出量の差×販売数量
「削減貢献量」の計算方法は簡単に表すと次の通りです。自社製品・サービスが存在しなかった場合に市場でもっとも採用され普及していたと考えられる製品・サービスや技術を仮定し、そのライフサイクル全体でのGHG排出量を算定します。次に、同じライフサイクル全体で排出量が少ない自社製品・サービスが普及した場合のGHG排出量を推定します。前者から後者を引いたものが製品・サービスごとの削減貢献量です。企業は、販売する個々の製品・サービスについて算出した削減貢献量や、それらを合算した企業全体の削減貢献量を開示・訴求します。
※実際の算出方法は製品分野などによって異なります。
パナソニック エナジーの“製品を通じた環境への貢献”
技術革新が「削減貢献量」の源泉
パナソニック エナジーの電池事業は「削減貢献量」のカギを握る領域です。技術革新により高エネルギー密度化や長寿命化を実現した電池が、電気自動車(EV)やデータセンター(DC)に使われることにより、従来製品と比べ、ライフサイクル全体で比べたときに社会全体のGHG排出の削減に大きく貢献しています。すなわち技術革新が「削減貢献量」の源泉になります。
「幸せの追求と持続可能な環境が矛盾なく調和した社会の実現」をミッションに掲げるパナソニック エナジーは、社会を変革する役割を担うために「脱炭素化の実現」を重要課題として設定しました。製品・ソリューションが顧客に使用される際のCO₂削減貢献量の拡大として、2030年度には4,500万トンの「削減貢献量」を目標に掲げています。
その実現をリードするのが、モビリティの電動化をはじめとした脱炭素に貢献する製品やソリューションの普及です。EVや電動アシスト自転車など、製品の電動化による社会全体のCO₂排出の削減効果を期待できる製品やソリューションの普及や、自社生産工程の脱炭素化(再エネ導入、工場効率化など)、リサイクルの取り組みなど、製品ライフサイクル全体でのGHG排出量削減の最大化を目指しています。
従来製品から置き換わることで「削減貢献量」を生み出すDC向け分散型蓄電システムの定量化も2024年度から実施しています。2025年度のパナソニック エナジーの「削減貢献量」は2,019万トン。パナソニック エナジーでは2030年度にはその3倍近くの4,500万トンの「削減貢献量」を目指しています。
パナソニック エナジーの車載用円筒形リチウムイオン電池を例に「削減貢献量」のメカニズムを見てみましょう。
パナソニック エナジーの充電池を搭載した二次電池式電気自動車(BEV)と、エンジン車などの内燃機関車(ICE)が同じ距離を走行した場合、BEVはエネルギーの動力への変換効率が高いため、燃油消費量と充放電量をCO₂に換算した量の差分が生じます。この差分が「削減貢献量」です。
インフレ抑制法と削減貢献量の関係性
インフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)は、米国において、気候変動対策として、2023年から2050年までの間に210億トンのCO₂を削減し、世界全体で5兆6,000億ドルの気候変動による経済損失を回避することを目指して設計された法律です。IRAでは、エネルギー安全保障と気候変動対策に繋がる産業を対象に、税控除や補助金などを実施しており、パナソニック エナジーでは北米で生産する車載電池の出荷量に対し$35/kWhの税控除を受益しています。これはパナソニック エナジーが車載電池の製造を通じて、社会のEV普及を促進し、CO₂排出量削減に貢献したことで得ることができた価値であると考えています。それを示すように、当社車載電池によるCO₂削減貢献量は、IRAによる税控除額と比例関係にあり、車載電池を通じた脱炭素化への貢献が社会から財務価値として評価された事例と捉えています。
“幸せの追求と持続可能な環境”へ
理解の浸透が脱炭素社会への扉を開く
パナソニック エナジーは前述の「幸せの追求と持続可能な環境が矛盾なく調和した社会の実現」というミッションに加え、「未来を変えるエナジーになる」というビジョン、そして大いなるチャレンジを強い意志(ウィル)として「人類として、やるしかない」を掲げ、ミッション実現に向けて歩みを進めています。
電気は「つくる」「おくる」「つかう」の三段階に「ためる」が加わることで、よりサステナブルに使うことができるようになり、社会の脱炭素化に欠かせない価値を生み出します。私たちがつくる電池を世の中に広く提供し、製品やソリューションを通じて社会をより良く変えていくことを目指しています。
「削減貢献量」は企業の環境価値が適正に評価されるための新しい物差しであり、今後は「削減貢献量」を活用した製品調達や投融資など“実践”への浸透が進んでいきます。算定が評価につながることで、「削減貢献量」は様々な産業分野で標準化され、世界共通の競争力を測る指標となることが予測されます。まずはこの新たな指標が広く社会に認知され、低炭素な製品・サービスの活用が増え、多くの企業活動が脱炭素と事業成長の両立に向かうことが大切です。パナソニック エナジーは電池技術の進化とその製品やソリューションを通じて、社会全体の脱炭素化に貢献することを目指しています。