第1回:シリーズ『AI画像認識』(1/2)

製造企業が陥りやすい5つのミスジャッジ【前編】

ディープラーニング技術の登場により、急速に発展するAI画像認識。ただしそれは、「魔法の杖」でもなければ、完全無欠のエキスパートでもありません。正しく生み育て、適切なシーンに適用しなければ人工の「頭脳」は「何も知らない」「できない」まま生涯を終えてしまいます。本シリーズでは、そうしたAI画像認識を製造現場に適用するうえでの留意点や手法を数回に分けて解説します。初回のテーマは、AI画像認識の導入を巡り、製造企業が陥りやすいミスジャッジについて取り上げます。取り上げる「ミスジャッジ」は全部で5つ。今回は、そのうちの2つのミスジャッジについて詳しく解説します。

ポイントは「正しく生み育て、適切なシーンに適用すること」

AI画像認識は研究開発の段階を経て、さまざまなシーンでの活用が進んでいます。しかしながら、「過度の期待」や「誤った認識」を持ったまま製造現場への適用を進めると、トラブルが発生し、せっかくのプロジェクトが台無しになることが少なくありません。画像認識の「頭脳(AI)」を正しく生み(設計し)、育て(学習させ)て、適切なシーンに適用(推論)するためには、まずは、「AI画像認識の特性と現在地」を知っておくことが何よりも重要です。

ということで、本稿では実際に起こったトラブルを踏まえながら、『製造企業が陥りやすい5つのミスジャッジ』について紹介します。それを知ることは、AI画像認識の利活用を考えるうえでの一助になるはずです。

結論から先に言えば、製造企業が陥りやすい5つのミスジャッジは次のように整理できます。

以下では、このうちの「ミスジャッジ(1)」と「ミスジャッジ(2)」について少し具体的に紹介し、残り3つのミスジャッジについては次回で詳しく説明します。

ミスジャッジ(1)AIなら何でもできると思い込む

AIを「魔法の杖」「完全無欠のエキスパート」のようにとらえてしまうと、できないことの多さに頭を抱えることになるでしょう。例えば、AI画像認識が話題となって以降、多くの方がこう考えるようになりました。

『とりあえず物体の画像を数多く学習させれば、AIがどんな判断もしてくれる』──。

ただし実際には、そう簡単な数だけの話ではありません。画像認識のAIは、認識対象物の判別に必要な正しい情報(画像データ)を適切にインプットしない限り、正しく認識できるようにはなりません。

例えば、1本の鉛筆をAIに認識させるために、白い紙の上に置いた鉛筆の画像データばかりを与えていると、赤い紙の上に置いた鉛筆は恐らく認識できません。それは、AIが『鉛筆というモノは、白い背景の上に置かれた細長いモノ』と学習してしまうためです(対象物の特徴ではないのに、たまたま与えた画像の特徴を過度に学習してしまうこの現象を過学習と言います) 。

また、右向きに置いた画像ばかり与えてもダメですし、光が当たって影ができているものも与えなければなりません。これは、人の子どもが色々な経験を経て、社会で活躍できるようになるのと同じです。そのため、判別の精度を一定の水準に持っていくためには、さまざまな条件で撮影した画像が必要となり、結果、想定をはるかに上回る量の画像を要することもよくあります。

AI学習 イメージ図

そして、『人が簡単に判別できることが、AIにとって難しいことは多々ある』という点も意識しておく必要があります。

例えば、クリーニング店では、洗濯前に衣類に特別な汚れがないか目視で確認しているでしょう。その際、食べこぼしがあるかもしれません。

人が目視で確認するのなら、5歳の子どもでも、食べこぼしを見て「汚れてるね」と教えてくれるでしょう。ところが、AIにとっては、それが『汚れ』か『模様』か、あるいは単なる『影』なのかを判断するのは非常にハードルの高い認識なのです。

ですから、AI画像認識に関して、『“小さな子どもでもできること”=“AIなら当然できる”』といった先入観や過度の期待があると活用の方向性を見誤ったり、『こんなこともできないのか』と激しく落胆したりすることになります。

その意味でも、AI画像認識で『できること、できないこと』、あるいは『AIにとって得意なこと、不得意なこと』を正しく理解しておくことが大切です。

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