第20回:シリーズ『AI画像認識 再入門』(1/2)

どうなる?どうする?「ヒト」と「AI」の共存共栄

ディープラーニング(深層学習)によって大きな発展を遂げたAI(人工知能)。AIの働きによって社会全体が効率化され、ヒトの生活がより豊かになり、生産性が飛躍的に向上するという“共存共栄”を予測する声がある一方で、AIによってヒトの多くの仕事が奪われると危ぶむ声もあります。果たしてAIとヒトとの関係は、今後どうなるのでしょうか。本シリーズの最終回として、その点について考えてみます。

AIがヒトの能力を超えるとき

ディープラーニングを使ったAIが囲碁や将棋のプロに勝利したことで、AIの進化で早晩、ヒトの知的労働、特に特定のルールに則った繰り返しの内容は不要になるという見解が多く聞かれるようになってきました。

囲碁や将棋のAIは、多くの対戦を繰り返し行うことで、より強い(洗練された)脳に成長していきますが、このAIが、囲碁や将棋のプロに勝利できたのは、ディープラーニングを使ったAIが、AI同士で学習のループを自動で回せることに起因しています。つまり、AI同士の対戦によって、膨大な量の棋譜が自動で作られていき、相互学習によってAIが猛烈な勢いで強くなり、プロの棋士でも歯が立たなくなってしまったということです。

こうした進歩が、さまざまな分野で進展することによって、コンピューターが全人類の知性を合わせた以上の知性を持つようになる「シンギュラリティ(技術的特異点)」が2045年に到来するという話もあります。

現在のAIは、学習した結果を推論に反映させるまでに数時間以上の時間が必要となる場合もありますが、将来的には、リアルタイムに近い時間間隔で学習ができるようになる可能性があるということです。

物事を判断する要素も、画像中心から、各種のセンサから収集した「音」「におい」「手触り」などの情報にも幅を広げて、総合的な判断が行えるAIも登場してくるでしょう。また、情報を得る際の条件も、ロボットアームを自らコントロールして変化させることで、AIによる判断が行いやすい情報を効率よく得るようになってきます。そして学習から導き出した推論と、その推論の結果に差異が発生した場合には、またその差異を教師データとして学ぶという学習のループを高速に回すことで、AIがヒトの能力を凌駕することが考えられます(図1)。

図1:AIがヒトを超えるとき
図1:AIがヒトを超えるとき

AI時代に求められるヒトの能力とは

AIの進化によって、全ての事象に対して、本当にシンギュラリティが到来するかどうかは分かりません。ただし、AIがこれからも発展を続けて、これまでヒトにしか行えなかった多くの業務を、ヒトの代わりに行えるようになることは確かです。

このようにAIが進化していく中で、ヒトはどのような能力に磨きをかけていけばよいのでしょうか。

この点に関しては、さまざまな意見があります。例えば、それほど遠くない未来にAIがヒトの能力を超えるのだから、ヒトは日常の判断・仕事をAIやロボットに任せて、これまでとはまったく違う生き方、暮らし方を模索すればいいという極端な意見があります。

また、問題発見の能力や創造力に磨きをかけるべきという意見もあります。この見解は、AIは、問題に対する答えを過去のデータから導き出す能力はあっても、何もないところから何かを生んだり、問題を発見したり、課題を設定したりする思考力はヒトのほうが上という考え方によるものです。ただし、必ずしも全てのヒトが、クリエイティブな業務を行うことを期待しているわけではないことも、意識しておく必要はあるでしょう。

AIが飛躍的に進化して、ヒトと同じように「意識」を持つようになれば、ヒトのような思考力や創造性を発揮するようになるかもしれません。ただし、現状では、ヒトの意識がどのようなメカニズムによって生まれるかが解明されておらず、AIに意識が芽生えるかどうかも分かりません。そう考えれば、創造力や問題発見・課題設定の能力が、これからのAI時代にヒトに求められる能力であり、知性であるという考え方もありえると言えるでしょう。

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