第9回:シリーズ『所在管理・動線分析のすゝめ』(1/2)

高精度動線分析で高効率な工場を築く(その1)

工場や倉庫、店舗、バックオフィスなどで、人やモノの動きを見える化する取り組みが進んでいます。施設内における人やモノの流れ、つまりは「動線」を分析・可視化することで、業務を効率化したり、新しい業務の進め方を見つけたりすることが可能になるからです。 本稿では、「工場における動線の見える化」に焦点を絞り、その可視化によって、工場内の業務を効率化する方法を3回に分けて紹介します。

「動線分析」という効率化の選択肢

工場の生産ラインでは、効率化に向けた取り組みがさまざまに行われています。

そうした改善活動を進めるうえで有効な一手となりうる取り組みがあります。それは、工場内の人・モノの動きを精緻にとらえて分析し、人・モノの「動線」を可視化することです。これにより、製造ラインにおける人・モノの動きに潜在する非効率性を見える化し、一層の効率化につなげることが可能になります。

工場の生産ラインではこれまでにも、人・モノの動きを見える化する取り組みが行われてきました。監視カメラや赤外線で禁止区域への入退室をモニタリングしたり、FAシステムと製造ラインのデータを連携させて生産管理に応用したり、といったかたちです。また、カメラを使って工場内における人・モノの動線を見える化する取り組みも行われてきました。

さらに、カメラを使う以外にも、もう一つ動線を可視化する方法があります。それは、人・モノの位置情報をセンサによってリアルタイムにとらえ、動線として分析・可視化する方法です。

もっとも、この方法にはいくつかの課題がありました。一つは、工場全域の人・モノの動きをとらえるセンサを設置することが物理的に困難であったり、仮に設置できたとしても、十分な精度が確保できず、許容できない誤差が出たりすることが珍しくなかったことです。

加えて、人・モノの動線を分析し、データとして可視化するのも簡単ではなく、人・モノの位置データが収集できたとしても、その中からどのデータをどう活用すると動線の分析・可視化が可能になるかという、最初の一歩で躓(つまづ)く場合もあるのです。

精緻な動線分析を可能にする要素とは

センサによる動線分析を巡る上述した課題は、それぞれ「データの収集方法」「データの分析方法」にかかわる課題と言い換えることができます。

このうち、「データの収集方法」に関する課題については、高性能の発信機/受信機を活用することが解決につながります。

例えば、製造ラインのどの辺りに、人・モノのスムーズな動きを阻害する要因が潜んでいるかが分からず、可能なかぎり広範なエリアの人・モノの動きをとらえたい場合があります。このような場合、電波の届く範囲や干渉の問題で、設置したセンサからデータが収集できないことがよくあります。実際、10メートルを超える天井高の工場の場合、天井に受信機を設置して発信機からのデータを広く収集しようとしても、そもそも、発信機からの電波が受信機にうまく届かないことが少なくありません。また、製造設備そのものがセンサの電波を遮る障害物となってデータの精度が落ちてしまうケースもあります。エリア単位での動線の可視化で構わないのであれば、それほど高性能な発信機/受信機を使う必要はないでしょう。ただし、工場全域の人・モノの動線を可視化したい場合には、可能なかぎり高性能な発信機/受信機を使う必要性が大きくなるのです。

2つ目の「データの分析方法」について言えば、人・モノの位置データと、他のデータとを統合的に分析していくことが大切です。

実際、製造設備や検査設備のデータと人・モノの位置データとを合成しなければ動線分析は行えません。また、FAシステムや生産管理システムのデータと人・モノの動きを連携させることで、動線分析をリソース配分や工程の最適化につなげることが可能になります。

さらに、動線の分析には、FAシステムの信号分析などとは異なる知見やノウハウが求められます。そのため、動線分析の実用化に向けては、専門家と一緒に分析プロセスの構築に取り組むことが良策と言え、そうすることで効果的な動線分析をスピーディーに実現することが可能になるのです。

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