第2回:シリーズ『AI画像認識』(2/3)

製造企業が陥りやすい5つのミスジャッジ【後編】

ミスジャッジ(4)頭脳の発育を外部ベンダー任せにする

どのような画像を撮影して対象物を認識させるか(どのような頭脳を生成するか)について「ミスジャッジ(3)」で述べましたが、ここでは、生成した頭脳を育てるポイントについて説明します。

このAIの発育を巡り、製造企業が陥りやすい間違いが、発育の作業をすべて外部のベンダーに委ねてしまうことです。

実のところ、外部のベンダーは、ユーザー企業のために画像認識の頭脳をどう育てるのが正しいのか、初期導入の頭脳の不足ポイントがどこにあるかは正確に分かっていません。

従来の業務システム開発では、開発を委託されたシステムベンダーの担当者が、顧客企業の現場に入り込み、業務の内容や運用の内容/方法を詳細に調べ上げ、把握したうえで、顧客企業に適したシステムを設計し、そこから開発に着手するという手順が踏まれてきました。

AI導入に際しても類似した部分はあるのですが、ディープラーニングを使った画像認識に関しては従来のシステム開発とは根本的に異なる部分があります。

それは、「ある判断(認識)を行うために、その理屈を理解する必要がない」という点です。

ディープラーニングは、過去に発生した事実(教師データ)をもとに、同様の状態が発生するのを待ち受けているだけの仕組みです。この「過去事実と同様の状態」を判断するポイントは、ベンダーが指定するものではなく、特定の目的──例えば、新たな認識対象物を追加するなどの目的に向け、頭脳育成のための画像をたくさん集め、AIに与えることで、AIは自動的に共通点を見つけて学習していきます。そして、この発育の作業を正しく行えるのはユーザー企業自身であり、もっと言えば、現場を熟知し、日々作業をこなしている人でしかないのです。

そのため、画像認識の頭脳を育てる工程をすべて外部任せにしてしまうと、適切な画像が撮影できず、効率的に頭脳を育てることが難しくなってしまいます。

また、「どのような画像を、どのように与えれば現場に適した頭脳が育つのか」という部分は、現場にとっての新たなナレッジであり技術といえます。それを外部ベンダーに任せるということは、自らベンダーロック※2にはまる行為と言い切れます。ですから、現場で発育のノウハウを蓄積するとともに、それを機密情報として大切に扱うべきです。

技術の発展に伴い、製造企業にとってのコアコンピタンスのかたちは変化します。AIが現場に導入されたのちのコアコンピタンスが何なのかを意識したうえで、差別化を図り企業価値を高める手段であるAIの導入を検討してみてください。

※2 ベンダーロックとは、導入ベンダーが、システムの継続運用に必要となる重要な要素を保有した状態になり、ユーザー企業が、他ベンダーへの切り替えができなくなる状態を指す。

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